ひともしごろ

2時間ほどツタヤにいた。

自動ドアが開くと、ポーチに滞っていた空気が風となって流入してきた。雨の匂い。手動の扉を押して外に出る。まだ降っているのかと思ったが、これはアスファルトに染み込んだ匂いであった。すっかり日が落ちた。しかし星はなく、空はすべて曇だと分かる。雨の匂いに、ドーナツを思わせる甘い匂いが混じった。正面のティンカーベルというパン屋だ。それで漸く朝から何も口にしていないことを思い出した。(朝、と言っても起きたのは14時で、僕は日曜日をまだ6時間しか消費していない。僕はその時間が何時であれ自分の目覚めたときを朝と呼び、眠るときを夜と呼ぶのだ。)ドーナツが食べたくなった。ティンカーベルはとっくに閉まっていて明かりも落ちていた。少し戻ればミスタードーナツがある。しかしミスタードーナツは飽きるほど食べた。ドーナツという単語を見れば口がミスタードーナツのオールドファッションの味を思い出すくらい食べた。なんなら匂いまで忠実に再現し、実際に食べたのと遜色ないような疑似体験ができる。異なるのは胃にそれが入ったかどうかくらいのものだ。それに早く家に帰りたいという気持ちもある。ドーナツは日曜日を有意義に消費したいという気持ちのいわば口実で、実のところ僕は家に帰る以外の予定を持ち合わせてはいなかった。そういえばツタヤに入る前は"みはら"で生大福でも買って帰ろうかとも思っていた。ツタヤに来たのだってそう。持ってないミスチルのCDを片っ端から借りたのもそう。予定らしい予定をたてて、それらしく遂行した、日曜日という時間に意義を持たせたかっただけだ。ああDMMカードでも買って帰ろうか。秋でもないのに最近寂しいんだ。

退屈は果てしなく、僕の寿命より永いんだ。