英会話塾の先生

子どもの頃通っていた個人の英会話塾のことを思い出した。

教室は先生の自宅で、生徒は僕を含め3人。と言っても曜日ごとにクラスがあったらしく、全体では10人くらいいることを何となく知っていた。

先生の名前はミカ。英語の授業のため僕らは呼び捨てしていた。ミカにはアメリカ人の夫と、5才くらいの息子がいて、僕らはどちらとも頻繁に接した。

僕は英語が好きだった。だから塾の雰囲気も、ミカも好きだった。他の塾を入っては辞め入っては辞め、通信教育を始めては溜め始めては溜めしても、ミカの塾をサボることはなかった。

中学に上がっても僕らは引き続きミカの塾に通った。入学してすぐ、僕は優秀であった。英語の成績は特によかった。しかし学年が上がるにつれ、みるみる下がっていった。やがて僕は英語の授業を億劫に感じるようになった。

僕は英語ではなくミカの塾が好きだったのだと思って、それから英語とまともに向き合うのをやめた。

僕らは中学卒業と同時にミカの塾をやめた。それから何年かしてミカ 一家がアメリカにある夫の実家に越したことを告げる年賀状が届いた。

 

子どもの頃、大人という生き物は、子どもじみた望みを一握の砂ほども持っていないのだと、漠然とそう感じていた。今にして思えば、ミカは幼い頃から外国人との結婚と移住を夢見ていて、描いた通りそれを実現させた夢追いだったのではないか(だとすれば僕が出会ったときその夢はほぼ達成されていたことになる)。夢がある。それが生きる原動力に、活力になる。実際、ミカは年より幾つも若かった。

まあそれだけなんだけど。