バンドマン

20時。エレベーターを降りると外はもう夏の匂いがしていて、適度に湿ったぬるい空気が僕の頬を撫ぜた。

 

田んぼのカエルの群れ。一匹が鳴くと、他も一斉に鳴き始めた。長いものに巻かれていく。いかにも生き物らしかった。

 

技術はない。ないくせに12万のギターを買って、しょった。右腕で借り物のカシオの古いキーボードを抱えた。世界一ダサかった。

 

才能もない。曲を作るが自己満の域を出ない。歌唱力もまた乏しい。

 

 

秋口には例年の通り、とうとう雌を捕まえられなかった数匹の雄ガエルが、声を枯らして鳴き続けるだろう。夏の間ずっと鳴いていたせいか、元々そういう声なのか、果たして分からないが、到底アマガエルとは思えない、カラスのような声だ。

その歌は酷く汚い。彼らはカエル社会の落ちこぼれだ。見るだけの夢を見て死んでいく。

 

Mr.Childrenを聞こう。大好きなバンドだ。

 

Mr.Childrenを歌おう。そして

 

Mr.Childrenになるんだ。」

 

彼はついにMr.Childrenにはなれなかった。